iPS細胞による脊髄損傷治療の過去、現在、そして未来。




先日yahooニュースで仮面女子というアイドルグループに所属する「猪狩ともか」さんが、事故により脊髄損傷、下半身まひ・・・の記事を見ました。

ひと昔前まで「脊髄損傷」=一度傷ついた神経は修復不能、一生車椅子での生活と信じられてきました。

ところがES細胞、iPS細胞の発見、再生医療技術の進化によって「神経細胞は再生できる」未来が開こうとしています。

少なくとも「マウスレベルでの運動機能回復は実現」しているというのが自分の認識であります。

そこで脊髄損傷治療の過去から現在、将来展望を研究機関の論文・プレスリリースから探ってみました。

主導しているのは慶應義塾大学医学部生理学教室岡野研、そして岡野栄之教授ですね。

岡野教授のインタービュー動画発見。

2009年2月

「世界で初めて人iPS細胞によるマウス脊髄損傷治療に成功」-慶応義塾大学 岡野栄之教授

URL:http://www.jst.go.jp/ips-trend/research-gov/topics/2009/02/post-23.html

これは人から作った神経幹細胞[iPS細胞]をマウスに移植。運動機能回復の成果を確認したとされています。ただ2009年時点では腫瘍化副作用のリスクが残る段階。

2011年9月

「ヒト皮膚から作った神経幹細胞(iPS)マウスに移植、安全性に問題ないことを確認」-慶応義塾大学 岡野栄之教授

URL:http://www.jst.go.jp/ips-trend/column/interview/11/no01.html

マウスだけでなくサルでの実験でも治療効果が確認できる。また質のよいiPS細胞(ガン化しない)を選ぶ重要性も語っています。人間の臨床研究が始まらない限り本当の安全性は確認できないとのこと。

2015年2月13日

「神経幹細胞移植後の腫瘍化メカニズム解明」-慶応義塾大学 岡野栄之教授

URL:https://www.keio.ac.jp/ja/press_release/2014/osa3qr000000lm53-att/20150213_01.pdf

2016年1月25日

「神経幹細胞の凍結保存法確立」

URL:https://www.keio.ac.jp/ja/press_release/2015/osa3qr000001c244-att/20160125_01.pdf

患者自身のiPS細胞を移植する方法では最適な時期に移植できないため、拒絶反応の起こり難い他人iPS細胞(iPS細胞バンク)を利用し冷凍保存する方法(CAS)を確立。

2016年8月3日

「慢性期脊髄損傷は神経幹細胞移植とリハビリが有効」-慶應義塾大学医学部脊髄損傷治療研究グループ

URL:https://www.keio.ac.jp/ja/press-releases/files/2016/8/3/20160803_1.pdf

これは脊髄損傷後、長期間経過した場合でも、細胞移植+リハビリテーションで運動回復効果がある研究成果とのこと。

2016年9月23日

「iPS神経幹細胞のガン化を予防する方法開発」

URL:https://www.keio.ac.jp/ja/press-releases/files/2016/9/23/160923_1.pdf

神経幹細胞を移植する前にNotchシグナル阻害剤で処理することで腫瘍化を予防できた。人への臨床試験へ前進とのこと。

2017年2月17日

「年老いたマウスでも有効性を証明」

URL:https://www.keio.ac.jp/ja/press-releases/files/2017/2/17/170217-1.pdf

若年マウスと高齢マウスを比較。高齢マウスでも若年マウスと同程度まで回復した。高齢者の脊髄損傷患者に効果がある可能性が示された。

2017年2月10日

iPS細胞を使った脊髄損傷治療(臨床試験)を申請-毎日新聞

慶応大学研究チームが学内倫理委員会へ申請。2018年前半に開始を目指すとのこと。

臨床研究まであと一歩

2018年5月現在、人への臨床試験開始スタートの段階まで進んでいるが分かりました。(まだ始まっていない)

  1. マウスで成功して
  2. サルでも効果を確認して
  3. iPS細胞バンクで冷凍保存技術を確立して
  4. 腫瘍化させない技術を開発して
  5. いよいよ人間への治療へ

と着実に再生医療実現化へ近づいています。

今、治療を待ち望んでいる患者さんは「スゴイ時代」に生きていると思います。